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こまきのブログです。

好きなアルバム紹介26〜「PAINTED FROM MEMORY」

今、村上春樹さんの「村上ソングズ」という本を読んでます。
春樹さんが自分の好きな音楽について語り、
和田誠さんがイラストレーションを担当されている、とっても素敵な本です。
(同じく春樹さん&和田誠さんの著書「ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)」が好きな方は、この本にも絶対はまると思います。)


で、この本の中で紹介されていた曲「This House Is Empty Now」の歌詞を読んで、
「あれ?何だかこの歌詞、覚えがあるなぁ。。」と思いました。



This house is empty now
There's nothing I can do
To make you want to stay
(この家は今は空っぽだ。
君をここにとどめておくための
言葉はもうどこにもない・・・)



んんん?確かに聞き覚えがある。
確かあのアルバムじゃなかったっけ?
バカラックコステロ共作の・・・


とか思いながら春樹さんの文章を読み進めて行ったら、
やっぱりこのアルバムに収録されている曲でした!


ペインテッド・フロム・メモリー [ツアー・エディション]

ペインテッド・フロム・メモリー [ツアー・エディション]

というわけで、ちょっと前置きが長くなりましたが
今日はこのアルバム「PAINTED FROM MEMORY」のご紹介です。
久しぶりに聴いてみましたが、本当に良いアルバムですね〜。




このアルバム「PAINTED FROM MEMORY」は、
バート・バカラックエルヴィス・コステロのコラボレーションアルバムです。
発表されたのは1998年。
私が買ったのは1999年にリリースされた「ツアー・エディション」のほうです。
(ツアー・エディションは2枚目のディスクにライブ音源が収録されています。)
とにかくこの頃は私がまだチャゲアス一色だった頃ですね(笑)


ほんとにその頃の私はチャゲアスしか聴いてなかったので、
さすがに「もっと他のものも聴かないとダメだろう」と思い始めました。
特に洋楽。


でも、何から聴いていいのかさっぱりわからなくて。
(今と違って音楽に詳しい友だちとかも周りにいなかったですしねー。)


ちょうどその頃チャゲアスファンクラブ会報の中で、
CHAGEさんASKAさんがご自分の好きな洋楽のアルバムを紹介しているコーナーがあって、
その中で自分が興味を持ったものを少しずつ聴いてみる事にしました。
「自分の好きなアーティストがオススメしてくれるものなら確かだろう」と思って。


で、ASKAさんがこのアルバム「PAINTED FROM MEMORY」を紹介してて。
詳しくは忘れちゃったけど、このアルバムについてASKAさんは


「今の流行からは外れたサウンドかもしれないけれど、
でもこのアルバムの中には、アーティストの『自分はこういう音楽をやっていくんだ』という
確固とした意志みたいなものが感じられる。そこに感動した。」


・・・という意味合いの事を話していたと思います。


で、私は興味を持って、このアルバムを買って聴いてみたわけです。


とっても良いアルバムでした。
その頃の私は(まあ今も大して変わらないのかもしれないけれど)
洋楽の事なんて右も左もわからなかったけれど、
とにかく聴いてて「いいなあ」と思いました。


聴いてみてASKAさんの「流行からは外れたサウンドかもしれない」の言葉の意味も、
私なりに何となく理解できました。
確かにそうかもしれない。流行からは外れているかもしれない。
でも、流行だとか何だとか、そういうものを飛び越えた「良さ」というか
音楽の「強さ」(それはおそらくアーティスト自身の気持ちの強さ)みたいなものが、
このアルバムの中にはしっかりとあるなあ、と思います。
そしてそれが聴く人の心を打つ。。


コステロの太くて熱くてじわあああっと心にしみわたる声。
その歌唱力に圧倒されました。
そしてそれぞれの楽曲の素晴らしいメロディー。
何とも言えない哀愁の漂う雰囲気。


バックのサウンドはとことんアコースティック。
ドラムスと、アコースティックピアノと、ウッドベースと、
たっぷりのストリングス、そしてホーンセクション、
時々シンセ系の音もちょこっと入り・・・という感じかな。


本当に良く聴いていました、このアルバム。
確かこのアルバムがリリースされた当時、
テレビでこのアルバムの制作ドキュメント?かツアードキュメント?みたいなのが放送されて、
その番組も一生懸命見ていた覚えがあります。


このアルバムを聴いていた当時は、私はまだインストものを聴く習慣がなかった頃なので、
あんまりバックの楽器の演奏には耳を澄ませていなかったように思うんだけれど、
今改めて聴いてみると、バックミュージシャンの演奏もすごくいいですね。
コステロの歌(歌心)を理解し、その気持ちに寄り添う・・・そんな演奏です。
とても素敵。


私がこのアルバムの中で特に良く聴いたのは、
「I STILL HAVE THAT OTHER GIRL」と、
「PAINTED FROM MEMOTY」と、
「THE SWEETEST PUNCH」の3曲。


「I STILL HAVE THAT OTHER GIRL」は、
心をぎゅっと強くわしづかみにされるような熱い切なさがびしばし伝わってくるし、
「PAINTED FROM MEMOTY」は、
甘くて優しくて切なくてあたたかい思い出・・ずっと大切にしていたいような・・
そんな気持ちが伝わってきます。とにかくメロディーがとてもきれい。
「THE SWEETEST PUNCH」はとにかく聴いてて楽しい!きゅんとしつつ、楽しい。



そして話題は最初に戻りますが、春樹さんは著書「村上ソングズ」の中で、
このアルバム『PAINTED FROM MEMORY』に収録されている1曲
「This House Is Empty Now」という楽曲について、こう書いています。
(春樹さんが「村上ソングズ」の中で聴く事を推薦しているのは
別のアルバムでアンネ・ソフィ・フォン・オッターが歌うテイクですが。)



「現代のスタンダード・ソングと呼んで差し支えないほどの、美しい奥行きを持った曲だ。
バカラックのたどってきた人生の年輪のようなものが、しみじみとメロディーの中に漂っている。
真実の哀しみを経験していない人には、心のどん底の暗闇をさまよった事のない人には、
おそらくこんな歌詞は書けないし、こんなメロディーは作れないのではないだろうか。」
村上春樹和田誠著「村上ソングズ」より)



「真実の哀しみ」・・・私は経験した事があるのかな。
たぶんまだなんだろう、な。


本当に良いアルバムです。
ご興味を持たれた方はぜひ聴いてみてくださいね。
渋いですよ〜〜〜。