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こまきのブログです。

河合隼雄×吉本ばなな

このお二人の対談は、終盤に出た「記憶について」の話がよかったなぁ。


吉本ばななさんは、子どもの頃からものすごく記憶力がよかったそうです。
それが自分の中で唯一誇れるところです、と・・・。


そして「なぜ記憶力がよかったか」というその理由についてですが。


吉本ばななさんは、
「子どもの頃から既に将来は物書きになりたいと思っていて、
何か感動する事があると、『この気持ちをどういう風に文章に書き表そう』と
いつもいつも考えていた」んだそうです。
そういう姿勢で物事に接しているうちに、記憶力が良くなった、と。。


子どもの頃から既に物書きになると決めていて、
しかもいつも「自分のこの気持ちをどう文章に書こう」と考えていたなんて
すごいですよね。
河合さんも、ばななさんのこのお話を聞いた時には
「それはすごいですなあ。」とおっしゃっていました。


そして、続いて記憶についての話。


吉本ばななさんが
「私の中にある記憶というのは、
『何月何日の何時に何があった』とかいう事柄的な記憶ではなく、
『この景色と組み合わさったこの気持ち』という感じの記憶なんです。」
と話すと、


河合さんが
「体全体で感じている記憶ですよね。
この夕焼け、とか、この息づかい、とか。
そういう記憶は保存される。
そういう記憶は、その人の人間をつくっていくのではないか。
その人の人間全体に作用していくのではないかと思う。
子どもの頃のそういう“保存”があるかどうかで、
人間は大きく違ってくるのではないか。」
とお話されて。


いい話だなぁと思ってじーんとしました。


「記憶が人をつくる」
「記憶はその人の人間全体に作用する」・・・


いい言葉だと思いませんか。


私の中にある記憶は、私という人間をつくる。
私の中にある記憶は、私という人間全体に作用する。


そう思うと、なんだかすごくあったかい気持ちになりました。



もう二度と生のライブでは聴けなくなってしまった大好きな大好きなバンド。
会えなくなってしまった大切な人たち。


でも、そういうものや人と一緒に過ごした時の記憶は今も私の中に大切に保存されていて、
今の、これからの私をつくって、私という人間に作用し続けるんだなあと思うとすごく嬉しいし、
「これからもずっと一緒なんだ」と思えます。



もうひとつ、ばななさんとの対談での河合さんの名言。
「強くなければならないのだが、
いわゆる“強い人”というのは感受性がない。
そうじゃなくて、いろいろな事を感じながら、
傷ついたっていいから、傷ついたままで闘う、そういう姿勢が大事。」



「傷ついたっていいから、傷ついたままで闘え。」・・・
名言だなあ。



吉本ばななさんの本は、私は今までに四冊ぐらいしか読んだ事がないんです。
長編だと、「TUGUMI」と、「キッチン」と、「アムリタ」の三冊。
あとは「とかげ」っていう短編集を一冊読んだ気がする。。


この四冊の中では私的には「キッチン」が断然オススメですね。
あの小説の切実な感じがとても好きで、繰り返して読んだ記憶があります。
ヒット作「TUGUMI」の透明感も素敵です。


「死と喪失」がテーマの作品を書き続ける吉本ばななさん。
私は最近のばななさんの作品は読んでいないので
今はどんな作風になっているのかわからないんですけど、
「キッチン」と「TUGUMI」は本当に読みやすい(かつ浅くない)ので
普段本を読む習慣があまりない方にもオススメです。
興味を持たれた方はぜひ読んでみてくださいね。


キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)


TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)