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こまきのブログです。

好きな絵本紹介①〜「どんなにきみがすきだかあててごらん」

どんなにきみがすきだかあててごらん (児童図書館・絵本の部屋)

どんなにきみがすきだかあててごらん (児童図書館・絵本の部屋)



この絵本は、こんな書き出しで始まります。



ちいさなちゃいろいノウサギは、おやすみのじかん。
おおきなちゃいろいノウサギのながいみみにつかまって、
ベッドへいくところ。


ちいさなウサギは、おおきなウサギにきいてみたくなった。
「どんなに、きみがすきだかあててごらん。」


「そんなこと、わからないよ。」
と、デカウサギ。


「こんなにさ」
チビウサギは、うでをおもいっきりのばした。


デカウサギのうでは、もっとずっとながかった。
「でも、ぼくは、こーんなにだよ」


なるほど、それはうんとだ。
チビウサギは、かんがえた。


「きみのこと、せいのびせいいっぱいすきだよ」
と、チビウサギ。


「ぼくは、きみのこと、ぼくのせいのびせいいっぱいすきだよ」
と、デカウサギ。


たしかに、たかいな。
チビウサギは、かんがえた。
あんなに、うでがながけりゃな。

こんなふうに、チビウサギとデカウサギの
「お互いが、相手の事をどれだけ好きか」という気持ちを
表現し合う競争は、延々と続いて行きます。
なんて素敵な競争なんでしょうね(笑)


最初は、自分の体の大きさ等を使って、
その気持ちを表現しようとするんですけど、
終盤では



「きみのこと、このみちをずっといって、
かわにとどくぐらい、すきだよ」
チビウサギは、さけんだ。


「ぼくは、きみのこと、かわをわたって、
おかをこえたぐらい、すきだよ」と、
デカウサギ。


それは、とってもとおくだ。
チビウサギは、かんがえた。

・・・とこんな風に、
気持ちを「距離」で表現したりするようになります。


最後には、眠くなって
もうなんにも思いつかなくなったチビウサギが、
夜空を見上げて、ある言葉で
自分がデカウサギを好きな気持ちを表現します。
そしてその言葉はデカウサギの心に染み渡ります。



「それは、とおくだ」
と、デカウサギ。
「それは、とてもとても、とおくだ」

眠ってしまったチビウサギに、デカウサギはかがんで
おやすみなさい、のキスをします。


そして、チビウサギのそばで、ほほえみながらささやきます。
ある言葉で、
「ぼくはこれぐらいきみのことがすきだよ」
と表現します。


そしてこのあたたかいお話は、おわります。



チビウサギが夜空を見上げて言ったセリフと、
最後にデカウサギがチビウサギに向けて言ったセリフを読んでいると、
心がじわっとあたたかくなって、なぜか泣きそうになってしまいます。


人が人を想う気持ちっていいな、“想い合う”気持ちっていいな、
言葉っていいな、と思います。



この絵本の中で、チビウサギとデカウサギの間柄は、
特定されていません。


このチビウサギとデカウサギは、
親子なのか、兄弟なのか、友達同士なのか、恋人同士なのか。。
そういう、チビウサギとデカウサギの
具体的な間柄は、最後まで謎なままです。


でもだからこそ、
「どういう間柄にもあてはまる、あてはめられる」
お話になっているんですね。



皆さんは、自分の好きな人のことを、どれぐらい好きですか。


自分にとても大切な人がいて、あるいは大切なものがあって、
その気持ちをどういう言葉で表現したらぴったり来るだろうか、
人に伝える事ができるだろうか・・・と思いをめぐらせてみる時間は、
なかなか素敵な、幸せな時間だと思います。


私はこの絵本を読むと、
「言葉や気持ちは、こういう為に使うものなんだよなぁ」って
つくづく思います。


人間の中にはいろんな感情があります。
優しくあたたかい感情もあれば、激しい暴力的な感情もある。


怒りの感情だけにとらわれたり、人を傷つけたり、
自分のうっぷんを晴らす為に言葉を使う事のないように
常に気をつけて行きたいと思います。
私は、自分という人間の中に、そういういろんな種類の
嫌な感情がたくさんある事を、よく知っています。



どうせ自分の気持ちや言葉を使うなら、
誰かや何かを、思い切り強く愛する為に使いたい。


誰かを救ったり、あたためたり、
何かを生み出したり、変えたりするのは
きっとそういう種類の感情だと、私は思います。


私はこんな風に、取るに足らない人間だけど、
でも、誰かや何かを強く愛したり、
その気持ちを言葉で表現しようとする時、
ちょっと自分がどこか遠いところへ行けそうな、
そんな気持ちになります。



この絵本は私に、言葉の意味とか優しさの意味を、
ふっと思い返させてくれる絵本です。
とてもあたたかい感触で。


一般の書店の児童書コーナーには、
まず置いてあるはずの絵本だと思います。


ご興味を持たれた方は、読んでみて下さいね。