It Will Be Fine!

こまきのブログです。

秋に聴く「Big Chill」

(ドラムのリムショット。)


ひろみちゃんのピアノが、あたたかな憂いを抱えて、ゆったりと歩き出す。


ピアノのふくよかな木の音色の中に含まれている様々な切ない種類の感情。


ピアノがふと考え込むように立ち止まる。


また歩き出す。


少し遠い場所へ誰にも知られずに静かに旅立って行くような、
そこで自分の今の想いを語っているようなアドリブソロ。


(秋の雨を思わせるようなドラムのシンバルの音。。)


想いをぎゅっと束ねる。
大切に確認するみたいに。


そして大きく広く解き放つ。


ピアノの和音のグラデーションが、空間へ、空へ溶けていく。
そこで何かが生まれてる。


そしてまた歩き出す。


静かに遠くへ去っていく。。。




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秋、この季節になると必ずヘビーローテーションになる曲、上原ひろみちゃんの「Big Chill」。
(ひろみちゃんのアルバム「Spiral」の日本盤に、ボーナス・トラックとして収録されています。)


何年か前にこのブログでも「好きな曲紹介」で紹介した事があるんだけれど、
その時の文章を今読み返してみると、
「どっひゃー、この時の自分って病んでるなあ」と自分でドン引きです。



ひろみちゃんはアルバムの曲紹介で、「Big Chill」についてこんな風に書いています。


英語のスラングでよく使われる「Chill」という言葉。日本語俗語で言うと「まったりする(くつろぐ)」という意味です。ぼーっとしている時に、何をしているのか聞かれると、「Just Chilling」と答えたりします。毎日忙しくしている自分も含めた現代人に、たまには思いっきりChillする事も必要、という気持ちをこめて。


(アルバム『Spiral』ブックレットの、上原ひろみ本人による「Big Chill」曲紹介より)


「まったりくつろぐ」・・そんなイメージでひろみちゃんはこの曲を作曲し、演奏したようですが、
数年前の私はこの曲を聴くと、自分のつらい部分の感情が深いところで揺さぶられるような感覚があって、
聴くたびに不安定な動揺したような気持ちになったというか、なんというか。
でも聴かずにはいられない、という。。
なんだか自分にとって危険な薬のような曲でした。
(なんにせよ、聴く人の気持ちをそれだけ根本的に深く揺さぶる事ができる作品ってすごいと思う。)


今はわりと「まったり」という言葉に近い心境で聴いているかな。
やっぱりすごく切なくはなるんだけれど。


ひろみちゃんがピアノで表現している言葉にならない感情に、
自分自身が抱えている言葉にならない感情を重ね合わせながら
この曲を聴いている時間がとても好き。


ひろみちゃんの楽曲の中で、私が最も良く聴いている曲であり、
いちばん好きな曲かもしれないな。