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こまきのブログです。

好きなアルバム紹介9〜「Leaving Home〜best live tracks2」(大村憲司)


今日は大村憲司さんの命日です。


私はまだ、「憲司さんフリーク」と言えるほど
憲司さんに詳しいわけでは全然ないですが、
でも憲司さんの事はとても大切に思っています。
そんな私なりの憲司さんへの思いを、
今日は書いてみたいと思います。



大村憲司さんは、J&Bの四人が敬愛するギタリストですね。
J&Bのメンバーだけでなく、本当に多くのミュージシャンが
憲司さんを敬愛されています。


大村憲司さんの経歴に関しては、この「ほぼ日刊イトイ新聞」のページの
下の方に載っている「大村憲司プロフィール」をご覧になって頂くのが
分かりやすいかと思います。


http://www.1101.com/omura/index.html


(ご興味を持たれた方は、プロフィールだけでなく、
このほぼ日の「大村憲司を知ってるかい?」
「続・大村憲司を知ってるかい?」の連載も、
ぜひ読んでみて下さいね。)



私が「大村憲司」という名前を知ったのは、いつの事だったか・・・。
たぶん2001年11月18日に、
J&Bが憲司さんのトリビュートアルバム
『LEAVING HOME』をリリースした事によって、
初めて私は憲司さんの名前を知ったのだと思います。
このトリビュートアルバムは、憲司さんの命日に合わせて
リリースされたんですよね。


このアルバムの1曲目に収録されている「LEAVING HOME」が
私は大好きで、大好きで。
本当に良く聴いたんですよね。


その後、廃盤になっていた憲司さんのソロアルバム四枚の
再発を希望する運動が起こって、
その結果、見事憲司さんのソロアルバムは完全限定生産という形で、
2003年8月に再発される事になりました。
(現在はこの憲司さんのソロアルバム四枚は、残念ながら入手困難です。)


その時に私が初めて買った憲司さんのアルバムが、『KENJI SHOCK』です。
このアルバム『KENJI SHOCK』を聴いた時の私の感想は・・・
「ものすごく綺麗な音のギターを弾く方だなぁ」という感じでした。
とても感動しましたが、でもこの時はまだ
「もっと憲司さんの音源を聴いてみたい!」という
気持ちにまではなりませんでした。


でも私の心の中にずっと「大村憲司」という名前はありました。
大好きな曲「LEAVING HOME」を作曲した人として。


J&Bの演奏する「LEAVING HOME」を何度も何度も大切に聴くうちに、
その曲の作曲者である憲司さんの事も、自分にとって
大切な存在であるように思えて来たんですね。


2003年8月のJ&B@渋谷AXのライブに遠征した時、
ちょうど同時期に東京のイシバシ楽器店で、「大村憲司展」が
あったので見に行ったりもしました。


そしてこの時のJ&B@渋谷AXの
アンコールで演奏された「LEAVING HOME」は
私にとって一生忘れられない演奏になりました。
「LEAVING HOME」はあの日、私がいちばん聴きたかった曲でした。
あの会場であの曲を聴いた時の気持ちは、今でも鮮明に覚えています。
それは幸せでとても温かい、勇気と希望と優しさに満ちた、
まるで光に包まれたような、素晴らしい空間でした。
あの時の気持ちを、私はずっと忘れないと思います。


そして同じ年2003年11月に、大村憲司さんの
未発表ライブ音源集のCDがリリースされる事になりました。


発売前にネットで、このアルバムの収録曲目を見たら、
大好きな「LEAVING HOME」も入ってるじゃないですか!
「うわぁ〜、初めて憲司さんご自身が弾く“LEAVING HOME”が聴ける!!」と
とっても嬉しかったです。
そして購入したのがこのCDです。


Leaving Home best live tracks II

Leaving Home best live tracks II

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このアルバムを聴いて、私は大村憲司さんのギターの魅力に
はまる事になりました。


このアルバムを聴いて大感動して、
同時期にこのアルバムと対になる形でリリースされていた
『Left Handed Woman〜best live tracks1』のアルバムもすぐに買い、
その後憲司さんのソロアルバム四枚も必死で集めて・・・って感じで
はまって行きました。
CAMINO』も、めちゃくちゃかっこ良かったなぁ。


ほんっとこのアルバム
『Leaving Home〜best live tracks2』はよく聴きました〜。
何度聴いても飽きる事がなかったですね。


私はやっぱりそれまでは、
インストもののアルバムを聴くときっていうのは、
そのプレイヤーの「ソロ」のシーンに重点を置いて
聴いていたような気がするんですよ。


何か新しいアルバムを聴いたときって、
「いやー、あのソロはかっこ良かった!」というような
感想を真っ先に持つ事が多くないですか?(私だけかな)


でもこの憲司さんのアルバムを聴いた時は、そういう感想じゃなくて・・・
もちろんソロもかっこいいんですよ。すごくかっこいいんですよ。
でも、憲司さんのギターは、ソロ以外のメロディー部分も、
聴いててソロを聴くときと同じぐらいの重要度があるというか・・・
メロディー部分も、ソロ部分を聴いてる時と同じぐらいの強さで、
ぐーっと心に迫って来るんですよね。


だから、憲司さんのプレイされている曲を聴いた後って、
「あー、あのソロがかっこ良かった!」という風な感想は、
私は基本的に持たないんですよ。
(もちろん曲によっては「ソロがかっこ良かった!」という
感想を持つ場合もありますが。)
憲司さんのプレイは、“楽曲の端から端まで”全てが素晴らしいんですよね。


あぁ〜、上手く言えません。もどかしい!
とにかく私は憲司さんの
このアルバムに収録されている音源のプレイを聴いて、
「ソロ以外のメロディー部分を、こんなに歌って歌って、
聴かせるギタリストがいるんだなぁ」と
その事にものすごく感動してしまったのです。


すごく極端な言い方かもしれないけれど、
何かそこに適当なメロディーがあったとして、
そのメロディーを憲司さんのギターの音がなぞりさえすれば、
もうその音楽は何でも芸術品になってしまうんじゃないか、
とさえ思いました。


そして、私を強烈にひき付けたのは、
憲司さんの美しいギターの音色の裏側に
いつもぴったりと張り付いている「孤独な影」の存在です。


私の勝手な感じ方かもしれないけれど、
いつも憲司さんのギターの音色の裏には、
孤独な悲しい影のようなものがひっそりと張り付いていて、
そしてその影が、憲司さんのギターの音色の彫りを深くし、
憲司さんのギターの音色の輪郭をはっきりとさせているような、
そんな印象を受けました。
そこに私は、とても惹かれました。


もし世の中に
「どれだけ人を愛して、愛されても消えない種類の孤独」
があるとしたら・・・。
憲司さんはそういった種類の孤独を、
かなり色濃く抱えていた方だったのではないかと思います。


憲司さんのプレイを聴いて私が勝手に感じる、全くの推測ですけど。
だから本当は全然違うかもしれません。すいません。


でもとにかく、私の中ではそういう印象があって。
「憲司さんは、何が苦しかったのかなあ」と
憲司さんのギターを聴きながら、よく考えます。


憲司さんのギターの音色はどこまでも澄んでいて美しく、そして誇り高い。
とても綺麗な音です。
もちろん、がんっがんに熱く激しいプレイをされている時もあるけれど、
そういうプレイもひっくるめて私にとっては「綺麗なギター」という印象です。


さて、ここからはこのアルバム
『Leaving Home 〜best live tracks2』の中で
私が特に好きなトラックについて、感想を書いてみますね。
もう既に相当長くなっていますので、簡単に。
数字はトラックナンバーです。


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●3.「Tokyo Rose」
J&Bのライブでもよく演奏される曲。
J&Bのライブでの、定番曲になった感もありますね。
このトラックでの憲司さんのソロのシーンは、
どこかへ決意を込めて旅立って行く憲司さんの背中が見えるようで、
そしてその背中はとてもきりっとしている感じがして、とても凛々しいです。
でもこの曲も、やっぱり「楽曲全体が」とても印象に残る曲です。
メロディーラインが、本当に素晴らしい。
またチキンジョージでこの曲を、聴きたいです。


●4.「The Lady In Green」
タイトルに「Green」という言葉が使われていますが、
私の中ではこの曲のイメージは、白。
聴いてると、白い薔薇のイメージが心の中に浮かんできます。
すっごく気品のある曲なんですよ〜〜。大好きです。


●5.「突然の贈りもの」
大貫妙子さんの歌が始まる前に、憲司さんの長い長いギターソロがあります。
このシーンでの憲司さんのソロは、
この曲の歌詞までもを表現しているような演奏です。
ほんっっとうに素晴らしいです。
歌いに歌う憲司さんのギター、心の隅々まで染み渡ります。
大貫さんの、空気をたっぷり含んだ、品のある丁寧な歌声と、
しっとりと絡み合う憲司さんのギター。
聞き惚れてしまいます。


●7.「Going Home:Theme Of The Rocal Hero」
JとBのライブで演奏される機会が多い曲。
清涼感がありつつ、かつ壮大で静かな光景が見えてくる曲。
JとBのライブで聴くと、いつも心の奥底で、静かに感動します。
「静かに打たれる」感じです。


●9.「Benjamin」
とってもかわいい曲です。優しいあたたかいメロディーライン。
このトラックでの、憲司さんの弾く
最後の一音の響きを、ぜひ聴いて頂きたいです!
もう芸術品です!信じられないほど美しい〜〜!!


●11.「Leaving Home」
このアルバムの中で、私がいちばん好きなトラックです。
矢野顕子さんのピアノと、
憲司さんのギターのデュオで演奏される「Leaving Home」です。


この曲の冒頭で、憲司さんが、この曲を作った時の想いについて語ります。
その憲司さんの話を聞いていると、ぐっと来てしまいます。
憲司さんは、神戸出身の方なんですよね。
そこにも勝手に、不思議な繋がりを感じてしまいます。


このトラックでの矢野顕子さんと憲司さんのデュオでの「Leaving Home」は、
どこまでも澄んだ、高く晴れ渡った秋空や、
同じようにどこまでも澄んだ、ふくよかな柔らかい水の流れを
思わせるような、そんな演奏です。


秋の空に、高らかに響き渡るような憲司さんのギター。
清らかな水の流れみたいな矢野さんのピアノ。


憲司さんのギターの音色は、もうこれ以上は磨き込めない鏡のように
一点の曇りもなく、澄み切っています。


でもその鏡は、あまりにも磨き込まれて過ぎて、
あまりにも澄み切り過ぎていたから、
本来なら映さなくていいものまでも、映してしまったかもしれない。
普通の人なら、見なくて済んだようなものも、
その鏡は映してしまったかもしれない。
だから、憲司さんは、苦しかったのかもしれないなあ。


痛々しいほどに美しく澄み切っている憲司さんのギターの音色を聴くと、
そんな事を思います。


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私にとって憲司さんは、「出会った時には天国にいた人」で、
私が憲司さんの生のプレイを聴ける機会は、この先絶対、ありません。
「憲司さんの生のギターを聴いてみたい」というこの願いは
一生、絶対叶う事はありません。


それはとても切ない事です。
「一度でいいから、憲司さんのギターを生で聴いてみたかった」と
何度も何度も思います。
「CDでこんなにも感動するんだから、
生だともう、信じられないぐらい素晴らしいんだろうな」って。
生で聴けないのが、本当に残念でなりません。


でも、憲司さんが残した作品を聴いて、憲司さんのギターに感動する時、
憲司さんの中の何かと、私の中の何かが
“響き合っている”という感覚があります。


それはとても、確かな感覚です。
時を越えて、響き合っている。


死んでしまって、その身体は消えてしまっても、
憲司さんの残した作品は、人の心を強く打ち続けています。
「死んでも、人の心の中に生き続ける」というのは、
こういう事じゃないかと思います。
私の心の中に憲司さんは生きているし、
私は確かに憲司さんに「出会った」のです。



私は、自分のやりたい事が見えなくなって迷った時に、
よく憲司さんのギターを聴きたくなります。


そういう時に憲司さんのギターを聴くと、
ずれてしまった「自分の中の軸」みたいなものが、
きちんとあるべき場所に戻る、という感覚があります。


それで、自分の抱えている問題が解決するわけじゃないですけど、
でもすごく、その「軸が戻った」感触を感じるときに、ほっとするんですよね。
とてもきりっとした気持ちになるし。
「憲司さんは私なんかよりもっと、きつかったんだもんな。頑張らなきゃ」
とも思うし。


個人的な話になりますけど、この憲司さんの未発表音源集
『Leaving Home〜best live tracks2』がリリースされた頃、
ある事で、私はとても傷ついていました。
問題自体はなんとかクリアできたものの、
「もう私はこの場所でやり続けていく自信がない」と途方に暮れていました。


そんな心境の中で、この憲司さんのアルバムを、
繰り返し繰り返し聴いたのです。
本当に、なんて綺麗なギターなんだろうと思いました。


憲司さんのギターの音色と、自分の傷ついた心が絡み合って、
憲司さんの楽曲を聴くたびに、自分の心の傷が、
じわじわと温かく癒されていく感触をいつも感じていました。


自分の心の傷に、憲司さんの美しいギターの音色が染み渡って、
そして私の傷は治って行ったのです。ゆっくりと、確実に。
音楽というものは本当に素晴らしいものだと、心の底から思いました。


だから、このアルバムを聴くたびに、
いつも自分のその頃の心境を思い出します。
音楽は人の心の傷を癒すのです。本当に。



美しく誇り高い大村憲司さんのギター、
ぜひ皆さん、聴いてみて下さいね。


私も今日はたくさんたくさん、憲司さんのギターを聴こうと思います。