It Will Be Fine!

こまきのブログです。

音楽と文章

三ヶ月の期間限定でオープンし、8月末にクローズした
小説家村上春樹さんのホームページ、「村上朝日堂」。


http://opendoors.asahi.com/asahido/



このホームページに掲載されていた
「フォーラム」(読者からのメールと、それに対する村上春樹さんの返信)
の中に、こんな内容がありました。



【読者からのメール】(抜粋)
『これだけは村上さんに言っておこう』を読んで、私が何故村上さんの文章を好きなのか、なんとなく分かったような気がしました。その理由のひとつは、村上さんの文章は好きな音楽が聞こえてくるように、私の頭の中にすっと抵抗なく入ってくることです。村上さんはよい文章をかくのには耳がよくなくては、と言っておられましたね。これを読んだとき、私ははっとしました。そっかー。だから読んでて気持ちいいんだ、と思ったのです。


初めて読んだのははたちの時で、『ノルウェイの森』だったのですが、それまで色々と読んでいた本には、読んでいる最中でなんとなくごつごつした感じをうけました。それにくらべて、『ノルウェイの森』は読むということに何の抵抗もいりませんでした。もちろん、内容の面で私には完全には理解できない部分もあったのですが、この文章をずっと読んでいたい、と思ったはじめての小説だったのです。


そんな訳でずっと村上さんのファンです。



【春樹さんからの返信】(抜粋)
 僕は文章の書き方の多くを音楽から学びました。音楽を長いあいだ仕事にしていたので、それは僕にとってすごく自然なことだったのです。ハーモニー、メロディー、そしてリズム。フリー・インプロヴィゼーション(即興演奏)とソノリティー(響き)。音楽と文章のあいだには多くの共通項があります。


 そうですね。きれいな文章は、きれいな音楽に似ています。というか、似ているべきなのです。僕はそう考えています。


村上春樹


(「村上朝日堂」フォーラム60の596より)



私も常々、「大好きな文章を読んでいるときの気持ちと、
大好きな音楽を聴いているときの気持ちは、なんだかとっても似ているなあ。」
と思っていたので、この読者の方がメールに書いている内容には、とても共感します。


好きな文章を繰り返し読んでいるときの気持ちと、
好きな音楽のメロディーを繰り返し聴いているときの気持ち・・・
その幸せ感っていうのは、とても似ています。



「文章を書く時に、リズムを大事にしている」という事は
春樹さんは以前からよく言っていました。


だから、私も文章を書く時には、
自分なりに、リズムには注意を払うようにしています。


たとえば、このブログに文章を書いて、UPする前に、
私は必ず何回も自分の文章を読み返すんですけど、
読み返してみて、「何だかここの部分は意味がわかりにくいな」
と思うような箇所があったときには、
私はその箇所を実際に声に出して読んでみます。


すると、そういう「わかりにくい」箇所の文章は、
たいてい「リズムが悪い」ことに気づきます。
で、その「リズムの悪い」箇所の
文章の並び方、単語の選び方、句読点の位置などを変えてみます。


そして、そうやって練り直した文章を、もう一度声に出して読んでみる。
その文章の「リズムが良くなった」ことを確認します。
それからブログに文章をUPする。



本などを読んでいて思うんですけど、
リズムの良い文章は、すっと心に入ってきます。


音楽も、リズムの悪いものは心に入ってこないのと同じように、
文章も、リズムの悪いものは心に入ってきにくいものなんですよね。



「文章とリズム」の関係がよりわかりやすいのが、絵本ではないかと思います。
良い絵本の文章は、リズムに優れたものが多いと思います。


絵本というのは、基本的に文章の短いものですから、
無駄なものが削ぎ落とされた形・・・
本当に必要最低限のものがそこにある形になっているから、
リズムもくっきりと見えやすいのかもしれないな・・・と思ったりします。
(そういう意味では、詩もそうかも。。)


小さいお子さんに絵本を読み聞かせする機会のある方は、
絵本を読む際には、文章のリズムを意識しながら、
「歌を歌うように」、あるいは「何かの楽器を演奏するように」、
読んでみるといいと思いますよ。


そんな気持ちで読まれた絵本の文章は、小さな子どもたちの心に
よりくっきりと残るのではないかと思います。
リズムを意識しながら文章を読むと、
読み手側も本を読むことが楽しくなってきますしね。



・・・と、「文章とリズム」の関係について書いて来ましたが。
私は春樹さんが「文章のリズム」を大事にしているという事は以前から知っていましたが、
上の村上朝日堂の春樹さんの文章にあるように、
「ハーモニー、メロディー、フリー・インプロヴィゼーション(即興演奏)とソノリティー(響き)」
まで意識されているという事は、この村上朝日堂を読むまで知りませんでした。


でも、意識してみると、確かにそうだな、と思います。
良い文章の中にはリズムがあり、ハーモニーがあり、
インプロヴィゼーションがあり、ソノリティーがある。
春樹さんの言うように、音楽と文章の間には多くの共通項があるんですよね。



私は、ただ「文章を書くのが好き」というだけの素人ですから、
そんな文章はもちろん書けっこないけれど・・・
でも、最近思うのは・・・


「ピアノを弾くみたいにして、文章を書けたらいいのにな。」
という事です。


相変わらず、ワケのわかんないこと言ってますけど(^^;


でも、なんか最近、そういう事を思うかな。。。