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こまきのブログです。

谷川俊太郎さんと話した日

komaki-13252011-03-06

この時期、毎年恒例となった谷川俊太郎さんの
「詩と音楽の贈りもの」コンサートに今年も行ってきました。


今年のコンサートのタイトルは、
「はずむ詩 ころがる詩 たたずむ詩」・・素敵ですよね。
会場は兵庫県立芸術文化センターです。


一部は谷川俊太郎さん・賢作さん親子の朗読とピアノ演奏。
二部は出演者によるトークコーナーと、
「VOICE SPACE」という東京芸大のグループのパフォーマンスでした。


なんと今回、終演後に、谷川俊太郎さんのサイン会があったのです!!
会場で、谷川俊太郎さん・賢作さん関連のCDか、
今日出演したグループVOICE SPACEのCDを買うと、
谷川俊太郎さん含む今日の出演者全員のサインがいただけるとのこと!!


それを知ったとき、もう私、思いっきり動揺!




だってこの谷川さんの「詩と音楽の贈りもの」コンサートに行くのは
私は今年で4回目になるけれど、過去三年サイン会なんて一回もなかったし。
谷川さんは新刊出版の際には東京とかではわりとよくサイン会とかされてるみたいですけど、
関西ではそういうのあんまり聞かないし。


だから、
「あああ私はこんなに谷川さんの詩が好きなのに、
きっと一生谷川さんのサインなんていただけないし、
会ったりする事もできないんだわ〜〜」と半ばあきらめていたのです。


そしたら、突然その夢が叶うときがやってきて、びっくり!!


会場で売られていたCDを買って、心の整理がつかないままサイン会の列に並んだ私。


だんだん、自分の順番が近づいてきます。
私の前の女性なんて、手にしてたCDを持った手が、緊張でかたかた震えてました。。
わっかるなぁ。。それぐらいの事ですよねえ!


順番を待ってる間、私は考えていました。
「谷川さんに、何かひと言、気持ちを伝えたい。。」


こんなにもずっと大切に作品を読んできた人に対して、何か、気持ちを。。。


でも何か私が話して、それで谷川さんに嫌な顔とかされたらどうしよう?
そんな事になったら私、立ち直れないかも。。
あああでも、この機会を逃したら、谷川さんに何かを伝える機会なんて、もう一生来ないかもしれない!
伝えるだけ、伝えてみよう!
・・・そう決心して。


伝えたい言葉は、ひと言だけ。
わりとすぐに決まりました。


ついに私のサインの順番がやって来ました。
長い間の憧れの詩人が、目の前に。


「お願いします。。」と私はまずはCDのケースを差し出しました。
CDのブックレット(ってゆうの?)に、筆ペンで
一文字一文字丁寧にサインをしてくださる谷川さん。
「あんなに丁寧に書いてくださるんだぁ。。」と感動。


そして、ちょっと反則だったのかもしれませんが、
私はこの日かばんの中に入れて持っていた谷川さんの詩集『62のソネット』を差し出して、
「これにもサインしていただけませんか」とお願いしてみました。
谷川さんは全く嫌な顔をせず、すっとサインしてくださいました。
嬉しい〜〜!本にサインしていただけた!
しかもサインしていただけたのが『62のソネット』っていうのが、私的にこれまた嬉しい!!!



これが谷川さんのサインです!!!



なんとゆうか、爽やかで、すがすがしくて、
そして優しさの感じられるあたたかい字ですよね。素敵〜。嬉しいーー。


サインをいただいた後、私はビビりながらも、谷川さんに話しかけてみました。
伝えたい言葉はひと言だけ。


「ずっと大切に、谷川さんの詩を読み続けています。。。」


神妙な顔で聞く谷川さん。
しん、とした2秒ほどの沈黙。


そして次の瞬間谷川さんは、ほわあっ、とまるで雪融けの瞬間のようなあたたかい笑顔を
私に向けてくださったのでした。


「ありがとうございます。
これからも読んでください。」


確か、「これからも頑張りますから」とかも言ってくれたような気がするんですけど、
もう私、


わあっ、笑ってくださった!!(畏れ多い)
わあっ、しかもお言葉をいただいてしまった!!(畏れ多い)


・・・と動揺しまくりで、細かいことを覚えていません。。。
(しかしそんな中でも握手はしっかりしていただいた。)


ええ、ええ、もちろんこれからも読みますとも!
心の底に染み込ませるようにして、大切に読み続けますとも!!


谷川さんと言葉を交わした時の細かい事は覚えていないけれど、
でもあのあたたかい笑顔の感触は、しっかりと覚えています。
きっと一生忘れない。


世界的な詩人が、奢りのひとかけらもない謙虚な姿で、
私に感謝の言葉を言ってくれた事も。


「ああ、気持ち伝えて良かった。」って思いました。
本当に嬉しかったです。



私が谷川さんの詩を読み始めたのはいつ頃からだったのか・・
思い出せないけれど、とにかくとても大切に読んできました。
たぶん15年くらいは読んでいる、はず。


谷川さんの詩を読んで、
とても澄んだ優しい気持ちになった事もあるし、
そこにある孤独や絶望に共感した事もあるし、
詩の中にいろんなかたちで存在する「愛」に心を熱く重ねたし、
詩の中に宇宙の広がりを見た事もある。。
夜中に部屋でひとりで谷川さんの詩を声に出してぽそぽそと読んで、
じっと涙ぐんだ事もあります。(暗いかな、私)


とにかく私にとって谷川さんは神様みたいな存在でした。
違う世界に住む人でした。
自分と同じ空間に立っている人だとかいう風に、想像した事はなかったです。


でもその長い間の憧れの詩人であり、私にとっての「神」みたいな人が、
私の目の前にいて、サインをいただけて、笑顔をくださって、言葉まで交わして、
握手もして。。。


長い間の夢でした。
叶う事はないんだと、ほとんどあきらめていました。


でも、夢は叶うんだなあ。
こんな事って、本当にあるんだなあ。。。


これからも谷川さんの詩集を手にするたびに、
谷川さんが私に向けてくださったあのあたたかい笑顔と、
「これからも読んでくださいね。」の言葉を思い出すと思うのです。


そしてそのたびに私は、あたたかい幸せな気持ちになるんだと思う。
それがとっても、嬉しいです。


夢みたいな一日でした。
谷川さん、ありがとう。
これからも谷川さんの詩を、ずっとずっと大切に読み続けていきますね。



ラストに、今回私が谷川さんにサインしていただいた詩集『62のソネット』より、
私の好きな詩をひとつ、紹介しますね。
すごく好きな詩です。
なんとなく、「今の私の心境だなあ」と思うのです。。



「17 始まり」


人がいないと私の中に
忘れっぽい夢がいる
時が私を追い越してゆく
私は苦笑する


私は逃げる
とまたもや近づきすぎてしまう


怖ろしいものの形ばかりにさわっていると
やがて唯ひとつの心に気付く


そしらぬ顔で
私は時を小包にしてしまう
それを送る 昨日の方へ


だが私に捨てることの出来ぬものがある
それらを抱き続けると
俄かにもはや新たな始まりだ


谷川俊太郎詩集『62のソネット』より)