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こまきのブログです。

好きなアルバム紹介17〜「GIFT」(JとB)

komaki-13252006-12-08

今日は、先月11月22日に発売された、
JとB(梶原順さんと浅野祥之さんによる
アコースティックギターデュオ)
のニューアルバム「GIFT」のご紹介です。




はじめてこのアルバムを聴いたとき・・・
なんだか言葉がなかったです。


とても深いところで心を打たれてしまって、
うまく気持ちを言葉にできませんでした。
なんだか、深い内容の小説を読み終えた後のような、
ひとりで深い穴をじっと見つめているような、そんな気持ちになりました。
アルバムから、とても深い「精神性」みたいなものを感じました。


このアルバムの中につまっている音楽には、
梶原さんと浅野さんの歩いてきた「道のり」みたいなものが、
表れているように感じられます。
おふたりが経てきた音楽的な道のりも、その他の人生の道のりも、
ぜんぶ音楽に表れているような感じがします。
そういうものが音楽から、にじみ出ています。


そしてなんというか、本当に「すっぴんの音」なんですね。
ところどころいろいろ重ねてあったりはするけれど、
基本的には梶原さんがいて、浅野さんがいて、おふたりのギターがあって・・・、
という本当にシンプルな世界ですよね。


このアルバムを聴いていると、
演奏者の「肌の温度」みたいなものを、すごく感じます。
いい意味で、とても生々しいな、と思います。とてもリアルです。


オリジナル曲は、聴いていると、ライブで聴いたときの感動が蘇ります。
JとBのライブに行くたびに、
「CDが出て、家でも好きなときに聴けたら本当に嬉しいのにな〜」って
ずっと思っていたので、念願叶って嬉しいです。
もちろんライブがいちばんですが、家でもJとBの音源が思う存分聴けるのは、
本当にしあわせです。


梶原さんと浅野さんの音色の対比もおもしろいな、って思います。
おふたりの音色は、本当に対照的ですよね。
優しく艶やかに光り輝くような、透明感のある梶原さんの音色と、
「ギィーン」と心に深くしみわたる、「いぶし銀」を思わせる浅野さんの音色。
お互いの音色が、お互いの音色を輝かせ合っているような感じがします。
梶原さんの音色は浅野さんの音色を輝かせ、
浅野さんの音色は梶原さんの音色を輝かせている、と思います。


曲ごとのグルーブの違いもおもしろいなぁ、と思います。
ひとくちに「グルーブ」といっても、
本当にいろんな種類のグルーブがあるんですよね。
「Memories」のようにふんわり柔らかいグルーブもあれば、
「Hush」のように熱く粘っこいグルーブもある。。。
そういう、曲ごとのいろんな種類のグルーブを聴きながら、
「たった二本のギターで、こんなにいろいろな種類のグルーブが生み出されるなんて、
ほんとすごいなぁ」って感動しながら聴いてます。


そしてjazz Life (ジャズライフ) 2006年 12月号 [雑誌]
インタビュー記事にもあったけど、
「力んでいない演奏」って大事ですよね。
もちろん一生懸命やっているんだけれど、
形を整えすぎない、決めこみすぎない、つめこみすぎない、
そのときの時間と空間をパッケージする・・・
そういう空間には、いい意味での「ゆとり」や「余裕」や「遊び」が
生まれるんだな、と思います。
だからこそ聴く側はいろんな気持ちを託しながら曲を聴くことができるし、
聴くたびに新しい発見ができるのではないかな、と思います。
なんだか、自分の仕事や生き方にも生かしたいなぁと思いました。


いろんな意味で、梶原さんと浅野さんが、
今の年齢だからこそできた作品、出せた味わいだと思います。
たくさんの経験を経たミュージシャンにしか出せないものが
ここにあるなあ、と思います。


今回、カバー曲をいっぱい入れてくださっているのに、
自分がそれらの曲のことを全然知らないのが残念です。
(ほんとこんな無知なファンで恥ずかしいです。)
カバー曲の原曲を知っていたら、
「あの曲が、こんなふうにアレンジされて、
こんなふうに演奏されているなんてすごい!」
みたいな感想も言えるのになぁ。。と、それが何だか残念です。


なので、私にとってはほぼ「全曲オリジナル」状態なんですが。
どの曲も、とっても楽しんで聴いています。



ここからは曲ごとの感想を、書いてみますね。


※数字はトラックナンバー、( )内はその楽曲の作曲者名です。


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●1.「Memories」(梶原順
アコースティック・ギター・マガジン (VOLUME30(2006AUTUMN ISSUE)) (リットーミュージック・ムック (第48号))
付録CDのテイクだと「木漏れ日系」に聞こえたのに、
アルバム「GIFT」のバージョンだと「さざ波系」に聞こえました。


聴いていると、あたたかい海の中にいるような、
あるいはあたたかい海を穏やかな優しい気持ちで見つめているような、
そんな気持ちになります。
そしてその海はやっぱり、あたたかい陽の光に照らされています。


ゆとりのある、決め込みすぎない空間の中で、音が優しく揺らいでいますね。
そういうゆとりのある自由な空間だからこそ、
曲を聴きながら、いろんな種類の感情を託すことができます。
音の揺らぎを幸せな気持ちで見つめ、感じることができます。



●2.「Laughter In The Rain」(Neil Sedaka
「まあ、構えずにのんびりゆっくり行きましょうや〜」みたいな、
そんな感じに聞こえるこの曲。とても親しみが持てます。
聴きながら、楽な気持ちでにこにこしながら、体を揺らしたくなります。
浅野さんのソロのときの、梶原さんのカッティングがとても好きです。
なんだかその音の響きが、夢いっぱいな感じがして。



●3.「The Gift」(梶原順
ここ最近の自分の気持ちの流れに、この曲はすごくぴったりとはまります。
自分の中のつらかった思いや、たどりついた穏やかな思い・・・。
いろんな思いを、この曲に重ねながら聴いています。


曲を聴きながら、自分の中を、いろんな想いが通過してゆきます。
聴きながら、自分の体の中で、いろんな時間をくぐらせます。時間を経過させます。
コップの中で液体を揺らすみたいに、自分の感情をゆらりと揺らしてみます。


そういう、自分の中での気持ちや時間の流れと、
この曲の中の時間の流れが、
隙間なくぴったりと重なるように感じられるときがあるのです。
そういうとき、泣きそうになります。
それは切ないけれど、とても幸せな気持ちです。


梶原さんの、一音一音、愛おしむような、慈しむような、
心のこもった演奏がほんとうに素敵だと思います。
本当に大切に弾いている、という感じがします。
私も自分に今与えられているものを、人を、こんな気持ちで大切にできたら、と思います。


これからもきっと、いろんなことがあると思うけど、
つらい地点をくぐり抜けた後には、
この「The Gift」の曲の中にあるような、こんな優しい気持ちに
いつも必ずたどり着けたらいいなって、そう思います。


この曲「The Gift」を聴いていると、
暗闇の中でそっと光る、ちいさなかけがえのない宝石を、
大切な想いでじっと見つめているような、そんな気持ちになります。
大切な灯りを胸の奥でじっと抱えているような、そんな気持ちになります。


この曲タイトル「The Gift」の意味は、
「すべては、いただきものである」という意味だと、
以前梶原さん、ライブのMCでおっしゃっていましたね。


自分に与えられているものを、人を、しっかりと大切にしたいな、と思います。
いつも、感謝の気持ちを忘れないように。。。



●4.「The Begeinning」(梶原順
この曲タイトルの由来は、
「年の初めにつくったから、『The Begininng』」でしたっけ。
でも何だかやっぱりこの曲には
「何かの始まり」を感じさせる雰囲気があるような気がします。


曲イントロの浅野さんのギターが、鼓動みたいに聞こえます。
何かが始まる、始まる・・・という感じがします。
何かが新しく始まるときの、静かに凛とした、心地よい緊張感みたいなものが、
このイントロによく出ていると思います。


そしてその後に奏でられる、梶原さんのギターによるこの曲のメロディー。
透明感があって、切なくて凛々しくて、とても好きです。
ライブでこの曲を聴くと、自分の体の中を、
透明な光がすっと通り抜けて行ったような、そんな気持ちにります。


この曲を聴いているとき、「うんうんうん」と、
心の中で頷いている自分がいるんですよね。
信頼できる友達の話を、「うん、わかるよ。すごくわかるよ。」と、
共感しながら、相づちを打ちながら聞いているときと、
同じような気持ちになります。


私にとってこの曲は、「信頼できる大切な友達」みたいな曲です。


この曲を聴いていると、とても勇気づけられます。
この曲の中に流れているような気持ちを大事にして、
頑張って行かなきゃな、と思います。



●5.「Hush」(Joe South)
初めてこのアルバムを聴いたとき、
「The Beginning」を聴き終わって、その余韻でじーんとしていたら・・・
突如響き渡ったこの「Hush」の「ジャカジャ〜ン!!」という大音量のイントロ。
不意をつかれて、もう私「びっくうぅ!」ってなりました。
あー、びっくりした〜〜(^^;(皆さんはびっくりしませんでした?)


まあそんな話はさておき。
この「Hush」、もう大好きです!かっこいいですね〜!メロメロです。
いいですよね、ふてぶてしくって、やんちゃで。
アコギでオラオラですね!(笑)


この執拗なまでのアクセントのつけ方が、いいなぁと思います。
熱いしるしをあちこちに「だん!だん!」とつけまくるような、
アクセントのつけ方。


リズムでガンガンに聞かせてくれるところが、とってもいいなと思います。
「やっぱりリズムって大事なんだなー」と改めて思いました。


そしてこの曲、「J&Bっぽい」と思いました。
J&Bの匂いがします。
奏法も、エレキ的な奏法がけっこう使われているような・・・?
(私はギターの奏法の専門的なことはよくわかりませんけど)


なんかこの曲聴いて、ますますJ&Bが聴きたくなっちゃいました〜〜。
来年は聴けるといいなぁ、J&B。
いろいろ事情もあると思いますが、本当に聴きたいです。
梶原さん、よろしくお願いしまーす。



●6.「Heart Of Gold」(Neil Young
なんか、夕日に照らされた荒野で、
ひとりハーモニカを吹く浅野さんの姿が浮かびます。
哀愁ですね。渋いですね〜〜。



●7.「Green Earrings」(Walter Becker-Donald Fagen
色鮮やかな光が、スピード感を持って交錯するようなイントロ、かっこいいです!


リズムやメロディーがパズルのように複雑に組み合わさっているこの曲。
スリリングな展開の映画を、
息をのんでじっと熱く見つめているような気持ちで、聴いてしまいます。
10月のJとB@神戸のライブで聴いたときも、
この曲は本当にかっこよかったです。しびれました。


曲中で何度も繰り返されるキメのメロディーがありますが、
あの部分をライブで聴くと、自分の体が、光に貫かれたような気持ちになります。


また味わいたいな、あの感覚。
またライブで演奏していただきたいです。



●8.「一絵」(浅野祥之
いい曲ですよね。とても大きな感情の広がりのある曲だと思います。
海のような大きさと深さがある。


なんだかイメージ的には「昭和」という感じがします。
哀愁、郷愁、懐かしさ・・・そんな言葉が浮かびますね。
この曲の雰囲気は、
大村憲司さんの「Tokyo Rose」にも通じるところがあるような。



●9.「Don't Be Cruel」(Otis Blackwell-Elvis Plesley)
ジャジーで、どこかおどけているというか、コミカルというか、
ご陽気な感じが楽しい曲ですよね。


10月に、JとB@神戸のライブでこの曲を聴いたときの気持ちを思い出します。
楽しかったなあ。あのとき。


あのライブのときのMCで、浅野さんが
「この曲のレコーディングで手拍子を録ったとき、
なんか、上司におべっか使いながら手拍子してるような気持ちになったよね(笑)
その演奏いいですねぇ!みたいな感じで(笑)」
っておっしゃってたのがすごく面白かったので、
アルバムで手拍子の部分を聞いていると、
浅野さんのこの言葉を思い出してくすくす笑ってしまいます。
好きだなあ浅野さん。


で、この手拍子のシーンでの浅野さんのソロが私すごく好きで、
まさしく「その演奏いいですねぇ!」状態です(笑)


またみんなで、ライブで梶原さんと浅野さんの演奏を聴きながら
手拍子したいですね。



●10.「Long Train Running」(Charles Johnston-Tom Johnston)
DEPAPEPEとのコラボということで、
「明るく爽やかで元気な青年系の曲をやるのかな?」と想像していたので、
実際に聴いてみたらけっこう哀愁系のメロディーだったので、
驚きました。渋いですね〜。


ADLIB (アドリブ) 2006年 12月号 [雑誌]の梶原さんのインタビュー記事によると、
「みんなで一緒に弾いたり、JとB VS DEPAPEPE の対比系に構成した」
ということでしたが、これはCDだけでなく、実際にライブで聴いてみたいですね〜!
ライブでやると、きっとその対比系の構成も、よりわかるかと・・・。


☆2005/5/19の日記「DEPAPEPE!」



●11.「Local Hero」(Mark Knopfler)
ライブで聴くと、いつもしんと静かに、心の奥深くで感動してしまうこの曲。
アルバムに収録されて嬉しいです。


「憲司さーん」と思いながら、聴いています。


ギターの音って減衰音のはずなのに、
この曲での梶原さんのギターの音を聴いていると、
梶原さんのギターの音って、そのまま放っておいたら
いつまでも消えずに伸び続けているんじゃないか、と思います。
艶やかで伸びのある美しい音。


この曲の浅野さんのソロ、綺麗ですね。
誇り高く美しい憲司さんの音を聴くときの感触と、通じるところがあります。
きっと浅野さんは、憲司さんの愛したこの曲のことを、
とても好きなんだろうな、と思います。
浅野さんのそんな気持ちが伝わってくる、美しいソロです。


☆好きなアルバム紹介9〜「Leaving Home〜best live tracksⅡ」(大村憲司)



●12.「Risa」(青木智仁
この曲「Risa」は、
2006年6月12日に永眠されたベーシスト青木智仁さんが
愛娘のリサさんのために書かれた曲です。
その曲を、JとBがカバーしました。


以下、ADLIB12月号の、梶原さんのインタビュー記事より抜粋です。



「これだけは2人一緒にブースに入り、向かい合って一発録りしようって決めてました。
ライブでも演ってたし、リハーサルもバッチリでしたよ。
なのにいざ本番になったら、お互い考えられないようなミスを連発する。
例えば1人が構成を間違えて先に行っちゃったり、2人同時にコードを忘れて演奏が止まったり。
もうその日のうちには終わらないって思いましたよ、ほんと。
とても信じられない、初めての経験でした。
あれは絶対青木さんがスタジオに来てて、悪戯して楽しんでるとしか思えなかった。
だからこれだけ妙に固い演奏なんです。
きっと青木さんは、この曲が終わってほしくなかったんでしょう。」(梶原順


※ADLIB12月号より

10月の、JとB@神戸のライブのMCでも梶原さんがこのお話をされていましたが、
このエピソードを思い出しながら聴いていると、たまらないです。


ステージ上やその他の場所で、青木さんとたくさんの大切な気持ちを交し合い、
長い時間を一緒に過ごしてきた梶原さんや浅野さんの悲しみは、
私なんかとは比べ物にならないほど深いもののはずです。
おふたりは、この曲をレコーディングしているとき、
どんな気持ちだったんだろう?と思います。


少し固い音の「Risa」を聴きながら、私は自分の青木さんに対する思い出を重ねます。
この曲を聴いているとき、私の記憶の中の青木さんは、とびきりの笑顔で笑います。
ほんとうにいい笑顔なんですよ。
どうしてそんなにいい顔で笑うんですか、勘弁してくださいよ、と思います。
梶原さんと浅野さんの弾く「Risa」を聴きながら泣いてしまいます。


記憶の中の青木さんが笑うと、切なくて悲しくもあるんだけれど、
でもそんなにもはっきりと青木さんの笑顔の感触が自分の中に残っていることに、
何だかほっとしたりもします。



今までは、「青木さんありがとう」と言っても、
なんだか自分の心の中に違和感がありました。
だって、まだ青木さんの死をきちんと受け入れることができていないのに、
まだ実感できていないのに、「ありがとう」とか言っても、
なんかこう、自分の中でしっくりこないのです。


でも、この梶原さんと浅野さんの弾く「Risa」を聴いたら、
なぜか本当に心から、「青木さんありがとう」って思えました。
今まで本当にありがとう。これからもずっと愛しています、と。。。


ブックレットにあった「Very Special thanks to Tomohito Aoki」の文字は、
このアルバム「GIFT」の、大きなテーマのひとつでもありますよね、きっと。


青木さんのことを、それぞれの心の中であたため、輝かせ続け、
それぞれの心の中で生かし続けていくことは、
残された私たちの、これからも生き続けていく私たちの、
使命であるようにも感じます。


これからもずっとずっと、青木さんのことを覚えていたいです。


青木さんありがとう。
梶原さん、浅野さん、ありがとう。


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・・・以上、全曲感想書いてみましたが。
めっちゃくちゃ長くなってしまいました。ごめんなさい。
しかも感覚的で抽象的な表現が多いから、ワケがわかんないかもしれません。
これまたごめんなさい。


音楽はそれぞれ、人によっていろんな聴き方や感じ方があると思うから、
このアルバム紹介は、「こまきは個人的にこういう風に感じた」程度に
読んでいただけるといいかな、と思います。
皆さんはアルバム「GIFT」を聴いて、どんな感想を持たれましたか。



アルバムを聴いていて、自分の中のさまざまな感情と音楽がシンクロし、
とけ合う瞬間が、幸せだな、と思います。


「耳を澄ます」というよりは、「心を澄ます」という気持ちで聴いています。


空間をまるごと楽しむような気持ちで聴いています。


このアルバムを聴いて、
自分もしっかりと人生と向き合わなければ、という気持ちにもなりました。



私はこのアルバムが大好きです。
きっと長く大切に聴き続けるアルバムになると思います。


梶原さんと浅野さんに対して
「素敵なアルバムを本当にありがとうございます。」
という気持ちでいっぱいです。


これからもずっと、梶原さんのギターを大切に聴き続けていきたいと思います。


GIFT

GIFT


☆梶原順オフィシャルサイト
(「J&B」のコーナーで、アルバム『GIFT』の全曲試聴ができます。)


☆2006/10/29の日記「JとB@神戸ウィンターランド」ライブレポ!