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こまきのブログです。

谷川俊太郎・谷川賢作 詩の朗読とピアノのコンサート

komaki-13252008-04-19

●2008年4月19日(土)
谷川俊太郎谷川賢作 詩の朗読とピアノのコンサート
詩と音楽の贈りもの〜Love Letter」


【会場】
兵庫県立芸術文化センター(中ホール)


【出演者】
谷川俊太郎(朗読)
谷川賢作(ピアノ)
高瀬“Makoring”麻里子(Vo)
笹子重治(ギター)




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【プログラム】

<1.朗読とピアノ>
あげます
手紙
沈黙


<2・うた>
みなもと
とか


<3.朗読>


<4.うた>
夢の中にだけ
願い


<5.朗読>


<6.うた>
a season
湖上



〜休憩〜



<7.朗読とピアノ>
恋のはじまり
沈黙


<8.うた>
うたっていいですか


<9.朗読>


<10.うた>
あのひとがきて
せみ


<11.朗読とうた>
ラブレター
とおく
さようなら


<アンコール>
朗読「ダブル」(?)
うた「ばか」


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遂に遂に、初めて「生の谷川俊太郎」さんに会える日がやって来ました〜!


谷川俊太郎さんは私にとって憧れの詩人。
谷川さんは各地で朗読コンサートをされているのですが、
私はなかなか機会が合わなくて参加できず、残念な思いをしていました。


そして今日、念願叶って谷川さんの朗読コンサートに初めて行ける事になりました!


私は以前テレビでは「動く、話す谷川さん」を見た事があります。
テレビで見た谷川さんは・・・
「ひょうひょうとしていて、とらえどころのない人」という印象でした。
とらわれない、風のように自由な印象の人。
見ていると「どういう人なんだかよくわからないなあ」と不思議な気持ちになる人。
上手く言えないですけど。


朗読コンサートの会場へ向かう途中、期待で胸がいっぱいでした。
実際に生で見る谷川さんは、どんな雰囲気の人なんだろう?
テレビと同じ印象なのかな?
どんな声で、私たちに詩を語って聞かせてくれるんだろう?
どきどきわくわくしながら会場へ向かいました。



会場に着きました。
今日の会場は兵庫県立芸術文化センターです。


客層はどんな感じなのかな〜、と想像つかなかったのですが、
もう本当に「老若男女」!という感じでした。
さまざまな世代の方がいました。
さすが幅広い世代の方に愛されていますね、谷川さんの詩は。


客席に座ってどきどきしながら開演を待ちました。



そして・・・
時間になりました。開演です!


ステージに谷川俊太郎さん&息子の賢作さん登場です!


生で初めて見る谷川さんは・・・
やっぱり
「ひょうひょうとしていて、とらえどころのない、
とらわれない、風のように自由な印象の人。」
でした。
この人の中に、あのことばの宇宙がつまっているわけです・・!


初めて生の谷川さんに会えて、最初の時点で既に感無量でした。
目に涙たまっちゃいました。
いやー、嬉しかったーー。



そして始まった詩の朗読。
谷川さん(俊太郎さん)の朗読の合間(ブレイク部分)に息子の賢作さんがピアノを弾いたり、
あるいは谷川さんが朗読をしているバックで、
BGMのようにずっと賢作さんがピアノを弾いていたり、というかたちで
進行していきました。


谷川さんの朗読は、本当に飾り気のない、訥々とした感じの朗読でした。
でも染みる。とても染みるのです。不思議。。。
谷川さんの言葉には、何か目に見えない魔法みたいなものがかかっているのかな?


今日のコンサートのテーマは「Love Letter」。
恋愛に関する詩が多く読まれました。


今日のコンサートで朗読された詩は、8割方私が読んだ事のない詩でした。
私は谷川さんの詩が好きでよく読むのですが、
なにせ谷川さんの詩集って膨大な量が今までに出版されていますから、
私が今までに読んできたものなんて、本当にごく一部のものに過ぎないんだなー、と
改めて実感です。


だからほとんど「新曲」・・・じゃなくて、「新詩」状態だったわけですが。
これがかえって良かったです。
だって、「谷川さんの生の朗読」によって、初めてその詩たちに出会うなんて、
なんとも贅沢で幸せじゃないですか!
とっても嬉しくて、どの詩もわくわくしながら聞きました。
ほとんどずっと目を閉じて聞いていました。
その方がより集中して浸る事ができたので。


賢作さんのピアノも素敵でした。
正直今回のコンサートに来る時私の頭の中には谷川俊太郎さんの事しかなくて、
賢作さんのピアノにはあまり期待していなかったのですが(ごめんなさい)、素敵でした。
賢作さんのピアノの音色は澄んでいました。とてもよく澄んでいる。
音の線は細めだけれど、弱々しい感じや不安定な感じは全くしない。
澄んだ水みたいなものを想像しながら、
透明なアクリルの線みたいなものを想像しながら、
私は賢作さんのピアノを聴いていました。
「激しく惹かれる」という気持ちは持たなかったけれど、
とても穏やかな、あたたかい好感みたいなものを持ちました。
「うん、このピアノ、好き。」と。。。



いくつかの詩の朗読が終って、谷川さんと賢作さんのおしゃべりタイム。


「こういう県立の劇場だと、道徳的な事も考えてしゃべらなきゃいけないのかなぁ?」
と話す谷川さんに、会場から笑い声が。


賢作さんが谷川さんに向かって
「76歳・・・すごいですよね。
そのうち(わからなくなって)人が書いた詩を『これは俺が書いたものだ!』と言ったり、
自分の書いた詩を『これは俺が書いたものじゃない!』と言ったりするんじゃないのー?(笑)」
といたずらっぽく言うと、谷川さんは


「(笑)。うん、言葉ってそういうものなんだよ。
言葉は共有物。『誰のもの』とかいう事はできないんだよ。」とおっしゃってました。
なるほどなああ。



おしゃべりタイムの後にボーカルの高瀬麻里子さん登場。
谷川さんや、谷川さん以外の人の詩にメロディーをつけたものを歌っていました。
賢作さんのピアノや、笹子さんのアコースティックギターと共に。


高瀬さんの歌声はとても素直な、あたたかく伸びやかな歌声でした。
この方も素敵だったー。


そして、詩にメロディーがついて「歌」になると、
言葉は自由に空間を羽ばたくものなんだな〜、と思いました。


一方メロディーなしの、谷川さんの「朗読」は、
雪が降り積もるように、私の体の中に静かに積もっていきました。
細胞にも染み込んでゆきました。
腹に、心に、たまってゆきました。
(女子が「腹」とか言うのもなんなんですけど、
「お腹にたまる」というよりは、「腹にたまる」の方がぴったりくる感じ。)


歌は羽ばたく。
詩の朗読はしみる。たまる。。。


コンサートは、
谷川さんと賢作さんの「朗読&ピアノ」、
高瀬さんの「うた」、
谷川さんの「朗読のみ」が、
交互に繰り返される感じで進んでいきました。


一部ラストで高瀬さんが歌った「湖上」素敵でした。
月の光が見えてきそうでした。
詩は中原中也のものだそうです。
中原中也も気になっているので、いつか読んでみたいですね。



15分の休憩をはさんで二部スタート。


二部での詩の朗読の合間のおしゃべりで、谷川さんがこんな話をされていました。
「〜の国(←国名忘れました。ごめんなさい。)に、
『今をとらえろ』ということわざがあります。
『死を覚悟せよ』ということわざもあります。
僕はこの年なんで、『死を覚悟せよ』が重く響きます。
でも、死を覚悟しながら、今をとらえたって、いいんだと思います。」


心にずしん、と響きました。。



二部も、一部と同じ形式で進んでいきました。


高瀬さんの歌、「うたっていいですか」でかなりウルウルきていた私。


「うたっていいですか
あなたが世界の全てに背を向けるその時に」


にもうかなり涙がこぼれそうになっていたんですけど・・・


次の谷川さんの朗読「あなた」という詩で完全に泣いてしまいました。


まるで誰かが見えない透明な手で、
私の心の奥にある水道の蛇口を勝手にひねって水を勢いよくじゃーっと出して、
そのまま出しっぱなしで無責任に立ち去ってしまったみたいな感じ。


私にはその栓の止め方がわからない。
とめどなく涙が出てくるのです。


恥ずかしいから泣き止みたいのに、
自分の身体であり、自分の感情なのに、制御ができない。
自分で自分をどうしようもできない時が、人にはあるのだなと思います。


「あなた」は今日初めて聞いた詩でした。
だけどその詩の中にあった言葉は、感情は、全て私が知っているものであり、
私の中にあるものでした。
その問いは、私が幾度となく今までに自分の中で問いかけてきたものでした。


谷川さんの「あなた」の詩の朗読を聞きながらぼろぼろ泣いている時間は、
痛く、切なく、熱く、それでいて優しく幸せな時間でもあったように思います。
いろんな感情がごちゃまぜになって、
感情の濁流みたいなものにのみ込まれていた瞬間でした。。


こまごまと書いてきたけれど、今日のコンサートは
この「あなた」の詩の朗読を聞いていたときの自分の気持ちに尽きるかなあ、と思います。
あんな時間が体験できて本当に幸せでした。
谷川さん、ありがとう。



そして二部のラストには、
私の大好きな谷川さんの詩「さようなら」にメロディーをつけたものを、
高瀬さんが歌いました。


「こんなに感極まっている状態で、その詩は反則やろー!!」と
関西弁で思いっきり心の中で叫びましたよ、私。


私がとても好きで、今までに何度も繰り返して読んできた詩です。



「さようなら」谷川俊太郎


ぼくもういかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
どこへいくのかわからないけど
さくらなみきのしたをとおって
おおどおりをしんごうでわたって
いつもながめてるやまをめじるしに
ひとりでいかなきゃなんない
どうしてなのかしらないけど
おかあさんごめんなさい
おとうさんにやさしくしてあげて
ぼくすききらいいわずになんでもたべる
ほんもいまよりたくさんよむとおもう
よるになったらほしをみる
ひるはいろんなひととはなしをする
そしてきっといちばんすきなものをみつける
みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる
だからとおくにいてもさびしくないよ
ぼくもういかなきゃなんない


(谷川俊太郎詩集「はだか」より)


この詩にメロディーをつけたものを高瀬さんが歌い終わったとき、
また私の目から、涙がひとつぶこぼれました。。



アンコールで谷川さんが朗読してくれた詩
「ダブル」(でタイトル合ってるかな?)も素敵でした。
詩も素敵だったけど、舞台で客席ぎりぎりのところまで来てくれて、
立ってこの詩を読んでくれた谷川さんが素敵だった!
この詩のラストをあんな風に読まれたら、
「ひゅう〜♪」ってかけ声入れたくなりますね。
あぁ〜、素敵ーーっ。


ラストは高瀬さん作詞の「ばか」。
これはとってもチャーミングな歌で、「高瀬さん、可愛いなあ。」って思いました。



コンサートは約二時間で終了。
拍手の中、谷川さんたちはステージを去っていきました。



実際に生の谷川さんに会って、
これからますます谷川さんの詩の魅力にはまっていきそうです。


谷川さんの詩の中には、生があり、死があり、音楽があり、自然があり、
性があり、愛があり、優しさがあり・・・。


言葉の宇宙を感じさせてくれる詩の数々。
これからも大切に読んでいきたいと思います。
谷川さんの詩を読んでいると魂が磨かれ、深まっていくような感じがします。


最後に、今日の谷川さんの詩の朗読コンサートで、心に刺さった言葉を
いくつか書いてみますね。
(どれがなんという詩のタイトルもわからないし、
間違っている部分もあるかもしれませんが。。)



●「群集のような弦楽器 予言のような管楽器」


●「まっすぐは貫く
まっすぐは続く
まっすぐを生み出すものは
まっすぐではない
曲がりくねり
せめぎあっている」


●「かけがえのない気持ちが欲しい
かけがえのない自分になりたい
たったひとりの誰かに会いたい」


●「本当に出会ったものに別れはない
あなたの死すら私を生かす
あなたとの思い出が私を生かす」


(さっき日付が変わって、4月20日になりました。。)