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こまきのブログです。

好きな本紹介13〜「うさぎおいしーフランス人」(村上春樹)

komaki-13252007-03-29

村上春樹さんの新刊です。
もう、表紙がかわいー!かわいー♪
29日に買って、その日のうちに
読み切っちゃいました(笑)


さて、この「村上かるたうさぎおいしーフランス人 [ 村上春樹 ]」は、
“読んで楽しむ村上春樹さん風かるた”です。
安西水丸さんのカラーイラスト、四コマ漫画
かるたにつけた春樹さんのショートストーリー、でつづられる
楽しい(アホらしい?(^^;)痛快かるたとなっています。



 きっと僕の脳の中にはその手の「まったく世の中のためにはならないけれど、ときどき向こうから勝手に吹き出してくる、あまり知的とは言いがたい種類のへんてこな何か」が眠っているささやかな精神領域があるのかもしれません。そしてそういうものをときに応じてきびきびと放出しておかないと、脳内のバランスが乱れて、精神のオゾン層みたいなものが破壊されて、気の毒なシロクマがどんどん溺れて死んで、結果的に小説も書けなくなってしまうのかもしれません。そんなわけですから、「まったくもう、こんなくだらんことをしている暇があったら、しっかりまじめに小説を書けよな」みたいなことは、どうかおっしゃらないでください。村上もこれはこれでまじめに懸命に生きているのです。ただ、これだけは本人にもどうにもならないことなのです。まじめに現実世界に対峙しようとすればするほど、ときとしてこのような「脳減る賞」方向に物ごとが勝手に流れていってしまうのです。どうかご理解ください。


村上春樹著「村上かるた うさぎおいしーフランス人」前書きより)



「精神のオゾン層みたいなものが破壊されて、
気の毒なシロクマがどんどん溺れて死んで、
結果的に小説も書けなくなってしまうのかもしれません。」って・・・
春樹さん、映画「不都合な真実」見たのかな??



さて、この「村上かるた」の中から、
私の好きなものをふたつほど引用して載せてみます。



【み】・・・「見ると、ジャクソンだった」


 えー、モダン・ジャズの歴史に大きな足跡をのこしたモダンジャズ・カルテット、略してMJQ、この偉大なジャズ・グループがどのような経緯でできあがったかを、詳しく、まるで見てきたように現場から中継してみましょう。ご存じのようにこのグループはピアニストのジョン・ルイスヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンを中心に結成されました。
 1951年のとある日曜の朝、ミルト・ジャクソンが「バンドを結成したい」という熱い想いを胸にジョン・ルイスの自宅を訪れ、玄関のドアを思い切りノックします。こんこん。こんこん。


 ミルト「おーい、ジョンいるか?ジョン、おーい、いないのか?大事な話があるんだよお」


 ジョン「眠いなあ。起きたくないなあ。いったい誰だよ、日曜の朝早くから、まったくもう」


 ミルト「おーい、ジョン、留守か?ジョン、留守か(ちっと苦しいなあ)」


 ジョン「まったく声のでかいやつだなあ。うるさいなあ」


 でもしょうがないからジョンはベッドを出て、ねぼけまなこでドアののぞき穴から外を見ます。見ると、ジャクソンです。


 ジョン「なんだ、見るとジャクソンじゃないか(ちっと苦しいなあ)。おまえならいいや、まあ中に入れよ」


 ミルト「よう、おみやげに海苔もってきてやったぜ」


 ジョン「じゃあ、生卵とってくるわ」



 みたいな感じで、わりに軽いのりでバンドがさくっとできちゃったわけです。歴史というのはけっこう簡単なものなんですね。それでは、現場からお伝えしました。


村上春樹著「村上かるた うさぎおいしーフランス人」より)


ほんっと、中身がないでしょう?(^^;
「見ると、ジャクソンだった」って〜(爆)
でもこういう無意味なダジャレって、ものすごく記憶に残ったりするんですよね。。
ああこれからMJQのアルバムを聴く時に「見ると、ジャクソンだった」が
やたら頭をかすめそう。困るなあ(苦笑)


☆2005/10/23の日記〜好きなアルバム紹介7「DJANGO」(MJQ)



【わ】・・・「笑うアボカド、そんなに楽しいか」


 「ひひひひ、ふふふふ、ははははははは」


 アボカドが笑っていますね。笑う門には福来たると申しますが、同じカドでもアボカドがこんなに笑うとは知りませんでした。それではアボカドさんにインタビューしてみましょう。


 「アボカドさん、ちょっとうかがいますが、いったい何がそんなにおかしいのでしょう?さっきからもう三時間半も笑いっぱなしでおられるようですが」


 「いや、何もかもがとても楽しくて、おかしくて、それこそ箸が転がっても笑い転げてしまうのです。そういう年代なんです。ははははは、ふふふふふ」


 「じゃあ、ひとつ、すりこぎを転がしてみましょう」、ころころころ・・・・・・


 「わああはっはっはっは」


 「ほんとだ。何だっておかしいんですね。じゃあ、たとえば・・・・・・、AB型の海老」


 「ぐわっはっはっはっは」


 「ナバロン洋裁店」


 「くううっくっくっくっくく」


 「ついでに、用賀ヨーガ教室」


 「ひいいいひっひひひいい」


 「次はちょっとむずかしいけど・・・・・・、ボバリー夫人はたわしだ」


 「ふふふふふ・・・・・・ボバリー夫人はたわしだったのか、ふわっははっは」


 「そうか、アボカドさんはどんなあほらしいジョークでも盛大に笑ってくれるんだ。貴重な人材だ。こういう人がテレビのお笑い番組の公開放送にいてくれると、プロデューサーも助かるでしょうね」


 寿司シェフ「おお、こんなところまで逃げてきていたのか。さあ、うちに帰るぞ。おいしいカリフォルニア・ロールを作ってやるからな」


 アボカド「カリフォルニア・ロールかあ。こいつはいいや。ぐわっはっはっはっはっは・・・・・・」



 貴重な人材がこれでまた失われてしまったようです。


村上春樹著「村上かるた うさぎおいしーフランス人」より」


いやもうこれは、私の中では「用賀ヨーガ教室」に尽きるかと・・・。
このダジャレ、春樹さん確か村上朝日堂の中でも言ってたなあ。
よっぽど好きなんだなあ(笑)
読んでて「AB型の海老」でも、うっ(笑)ときたんだけど、
この「用賀ヨーガ教室」でこらえ切れずに吹いちゃいました(笑)
ああっ、くだらなーーい(笑)
春樹さん、最高!!



この本は、読んで「このくだらなさと無意味さが最高じゃん!」と喜ぶ人と、
「何なのこれ?意味わかんない!」と怒る人の
二手に分かれるんじゃないかなー、と思うのですが
私は春樹さんのこういう部分って大好きなんで、
読みながら「最高!」と思いました。


前書きに春樹さんが書いてた
「ぜんぜん世の中のためにならないものって、
ときどきは必要ですよね(と同意を求める)。ですよね?」
という言葉には「その通り!」と強くつよく同意です。



落ち込んでる方、どうにも浮上できない方にはかなりオススメの一冊です。


私も、4月からなんだかえらい状況になるらしい、
という事がわかって(3月27日に発覚)、ものすごく落ち込んでたんですけど、
この本を読んで、悩んでるのがなんだかアホらしくなりましたからね。


とはいっても、やっぱり不安なんですけど。。


でも、春樹さんがこの本の前書きで書いていたように
「まじめに現実世界に対峙しようとすればするほど、
ときとしてこのような『脳減る賞』方向に物ごとが勝手に流れていってしまう」
っていうの・・・こういう姿勢って、大事だと思うんですね。
こういう肩の力の抜け具合って、すごく大事なんだと思う。
そういう気持ちのバランスを上手に取って来たから、
春樹さんはいろんな事がありつつも長くものを書き続けられているんだと思うし。
だから私もそういうの、心がけたいな、と思うんだけど。


さあ、無事に乗り切れるか4月。



あれ、ちょっとラストが本紹介からそれたかも。すいません。


この「村上かるた うさぎおいしーフランス人」は発売されたばかりなので、
今はどの書店でも平積みでたくさん置かれていると思います。
ご興味を持たれた方はぜひ書店で手にとって、
ぱらぱらとご覧になってみてください。


そして気に入ったら、ぜひそのままレジに持っていってください(笑)