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こまきのブログです。

好きな本紹介④〜「東京奇譚集」(村上春樹)

東京奇譚集

東京奇譚集


村上春樹さんの、最新短篇集です!


もう、最っ高!!!面白かったー!面白かったあぁ〜〜!!
この短篇集素晴らしいです!
お願いですから皆さん、読んで下さいーっっ!(←うるさい)


最近私が読んだ春樹さんの作品の中では(長編・短篇・エッセイ含めて)、
もうピカイチに面白かったです!
(先日紹介した「人生のちょっとした煩い」もすごくいい本だったけど、
あれは春樹さん自身の作品ではなくて、翻訳ですからね。)


もうほんと、読んでて「どんぴしゃ!!」って感じでした。
すごく読んでて、ぴったりぴったり、来たんですよーー。


ええと、では、お話の内容がネタばれしない程度に、
それぞれの短篇のあらすじ&私の感想を、さくっと書いて行きますね。


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●「偶然の旅人」
【あらすじ】
前半は、春樹さん自身が体験した「不思議な小さな偶然」についてのお話。
後半は、春樹さんの知人が体験した、
「その後の人生に影響を及ぼす事になった、深い意味を持つ偶然」のお話。


【感想】
このお話の中で春樹さんが体験した「小さな偶然」・・・
この手の種類の偶然は、私も何度も経験した事があります。


そして春樹さんがそういった偶然に対して、
「どちらのケースも、まったく内容的にはとるに足りない出来事である。
それが起こったことによって、人生の流れに変化がもたらされたわけでもない。
僕としてはただ、ある種の不思議さに打たれるだけだ。
こういう事が実際に起こるんだ、と。」
・・・とおっしゃっているのも、すごーくよくわかります。


そうなんですよ、そういう小さな不思議な偶然に出会うと、
心を「打たれる」んですよね。
ものすごく強い感触ではないかもしれないけど、
でもとても確かな感触で、自分の心の大切な部分を、「とんっ」と打たれるのです。
そこにはきっと、ちょっと感動的な響きがある。
そしてその“偶然”には、絶対に意味がある。
私はそう思っています。


このお話後半の、春樹さんの知人が体験したような、
「人生の流れに影響を及ぼすような種類の偶然」っていうのには、
私はまだ出会った事がないですね。
でもそういう事って、きっと実際に起こるんだろうな、と思います。
私は信じますよ、この種類の話。
私もこれから先、そういう深い意味を持つ偶然に、出会うような事があるのかな。
楽しみなような、怖いような。


このお話に登場した「ゲイのピアノ調律師」の姿が、
春樹さんの長編小説『海辺のカフカ』に登場する
“大島さん”とどこかダブったんですけど、それって私だけ??

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●「ハナレイ・ベイ」
【あらすじ】
サチのもとに、ホノルルの日本領事館から、
「サチの息子(19歳)が、ハナレイ湾で大きな鮫に食われて死んだ」
という知らせが入る。
その知らせを聞いたサチは、すぐにハナレイへ向かった。


それ以来サチは、毎年この息子の命日の時期になると
ハナレイの街を訪れるようになった。
ある時、サチはハナレイの街で
日本人の学生サーファー二人組に出会って。。


【感想】
ちょっと最近、人間の命というものについて深く考えさせられたので、
この話は一行一行、胸にしみました。
警官がサチに語ったセリフ、ぐっと来ました。


こういう事が起こった場合、私達はそれを受け入れるしかないのです。
それはとても、難しい事だけれど。

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●「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
【あらすじ】
40代半ばの男性“私”は、探偵業のようなもの(?)を営んでいる。
(しかし報酬は受け取らない。)
そんな“私”のもとに、ある日ひとりの女性が
「夫を探して欲しい」と依頼をしにやって来た。
彼女の夫は、ある雨の日曜日の朝に、
同じマンションの二つ下の階に住む母の様子を見に行った後、
そのマンションの24階と26階を結ぶ階段の途中で、
忽然と姿を消してしまったのだ。
「今から階段を上ってうちに帰る。
すぐ食べられるように朝食のパンケーキの用意をしておいてくれ。
お腹が空いたよ。」
という電話を、妻に残して。


その女性の依頼を受けた“私”は調査に乗り出し、
彼女の夫が消えた「階段」へ向かう。。


【感想】
「健康の為に喫煙を続ける男性」いいですね(笑)
いちばん好きだったのは、小学生の女の子と、“私”の会話のシーン。
このシーンでのふたりの会話は、あまりに自分の心境とシンクロし過ぎて、
読んでて背筋がぞくぞくうっ、となりました。
そう、誰も「ドアのようなもの」を探し続けて、生きているんですよね。


「一目見れば、その場でぱっとわかるはずなんだ。
ああ、そうだ、これが捜していたものだって。」


一目見れば、その場でぱっとわかる。わかる・・・。

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●「日々移動する腎臓のかたちをした石」
【あらすじ】
淳平は16歳の時に、父親にこんな事を言われた。
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。
それより多くもないし、少なくもない。」


父親のこの「三人の女」説は、根拠の十分な説明も与えられないまま、
一種の強迫観念となって、淳平の人生につきまとった。


やがて大人となり、小説家となった淳平は、
ある日ひとりの、不思議な魅力を持つ女性に出会う。
淳平は考える。
「この女性は、自分にとって“本当に意味を持つ”女性なのか?」と。。


【感想】
春樹さんの別の短篇集『神の子どもたちはみな踊る』という本に収録されている
「蜂蜜パイ」という短篇の、番外編にあたるお話です。


私はその「蜂蜜パイ」という短篇が大好きなんです。
たぶん今までに読んだ春樹さんの短篇の中では、いちばん好きだと思います。
何度も何度も、繰り返して読みました。
ちょっと落ち込んだ時とかに、ふっと読みたくなるお話なんですよね。
読むと、ふわっと元気が出る。


その「蜂蜜パイ」の主人公である淳平に、
またこの「日々移動する腎臓のかたちをした石」のお話の中で
再び会えて、とても嬉しかったです。
このお話の中で、淳平は「職業」の意味を、ある言葉に例えます。
その言葉が、とっても素敵なんですよね。
読んでて「あぁ、本当にそうだよなぁ〜」と感動しました。


このお話のラスト近く・・・
155ページの最後の行「大事なのは〜」から、
156ページの1行目「〜常に最終でなくてはならないのだ。」の一文は、
もうこれは、春樹さん自身の想いであり、春樹さん自身の声だと思います。
こういう真っ直ぐな春樹さん、好きだなあ。

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●「品川猿
【あらすじ】
安藤みずきは、大田区にあるホンダの販売店で働く26歳の女性。
彼女の夫は現在30歳。
結婚生活にも、仕事にも特別な不満はない彼女。
しかし彼女には、人に言えない密かな悩みがあった。
それは、「時々ふっと、自分の名前を忘れてしまう」という事。

思い悩んだ彼女はある日、自分が住む品川区の広報紙で、
「区役所で『心の悩み相談室』が開かれている」という記事を目にする。
みづきはその、区役所の主催するカウンセリングに通い始めて。。


【感想】
やられたー!やられましたー!!
こんな展開、ありですか〜?!
みずきの名札を盗った犯人が判明したところで、
もう私、頭真っ白、口あんぐりでした。
比喩じゃなくて、本当に電車の中で読んでて、
口がぽかーんと開いてしまったんですよ。
「ええーっっ」って感じで。
これには本当にやられた。参った。。


最初にこの話を読んだ時は、その意外な展開のすごさが
頭に強烈な印象として残ったんですけど、
今日もう一回読み返してみたら、
「一番大事なのは、そこじゃないんだな」という気がしました。


この意外な展開は、もちろんこの話の中の非常に重要なポイントだと思いますが、
でもいちばん大事なのは、きっともっと他の事。
春樹さんがこの話を通して、私達に伝えたかった
とても強い、真っ直ぐなメッセージがあるんです。
そのメッセージは私にしっかりと伝わったし、
それは確かな力強い、ポジティブな明るい感触で、私を勇気づけてくれました。
ラストまで読むと、みずきに対して
「頑張ってね!私も頑張るから!」と、
そういう言葉を、笑顔で送りたくなります。


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あぁ、全然さくっと行かなかった・・・。
結局長くなりましたね。ごめんなさい。
(もうそんな事は既に予想してました?)


本当に素晴らしい短篇集でした。
私はもし今、人に「村上春樹さんのオススメ本は?」って聞かれたら
迷わずにこの短篇集『東京奇譚集』をおすすめしますね。


っていうか、聞かれなくてもこちら側から積極的に
「この本、ぜひ読んで下さい!」って
オススメしまくりたい感じです。(←迷惑)


何度も言いますけど、ほんとうぅーーに面白かったです。
「春樹さん以上に、自分の心にぴったり来る作家は絶対いないね!」と
改めて強く確信した本でした。
どの話も、読んでてちょっと泣きたくなりました。


春樹さん大好き!!



☆「村上モトクラシ」内『東京奇譚集』ホームページ


http://www.shinchosha.co.jp/murakami/kitan/index.html
(「立ち読み」のところをクリックすると、
この短篇集に収録されている「偶然の旅人」の冒頭文が読めます。)