- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 単行本
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村上春樹さんの、最新短篇集です!
もう、最っ高!!!面白かったー!面白かったあぁ〜〜!!
この短篇集素晴らしいです!
お願いですから皆さん、読んで下さいーっっ!(←うるさい)
最近私が読んだ春樹さんの作品の中では(長編・短篇・エッセイ含めて)、
もうピカイチに面白かったです!
(先日紹介した「人生のちょっとした煩い」もすごくいい本だったけど、
あれは春樹さん自身の作品ではなくて、翻訳ですからね。)
もうほんと、読んでて「どんぴしゃ!!」って感じでした。
すごく読んでて、ぴったりぴったり、来たんですよーー。
ええと、では、お話の内容がネタばれしない程度に、
それぞれの短篇のあらすじ&私の感想を、さくっと書いて行きますね。
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●「偶然の旅人」
【あらすじ】
前半は、春樹さん自身が体験した「不思議な小さな偶然」についてのお話。
後半は、春樹さんの知人が体験した、
「その後の人生に影響を及ぼす事になった、深い意味を持つ偶然」のお話。
【感想】
このお話の中で春樹さんが体験した「小さな偶然」・・・
この手の種類の偶然は、私も何度も経験した事があります。
そして春樹さんがそういった偶然に対して、
「どちらのケースも、まったく内容的にはとるに足りない出来事である。
それが起こったことによって、人生の流れに変化がもたらされたわけでもない。
僕としてはただ、ある種の不思議さに打たれるだけだ。
こういう事が実際に起こるんだ、と。」
・・・とおっしゃっているのも、すごーくよくわかります。
そうなんですよ、そういう小さな不思議な偶然に出会うと、
心を「打たれる」んですよね。
ものすごく強い感触ではないかもしれないけど、
でもとても確かな感触で、自分の心の大切な部分を、「とんっ」と打たれるのです。
そこにはきっと、ちょっと感動的な響きがある。
そしてその“偶然”には、絶対に意味がある。
私はそう思っています。
このお話後半の、春樹さんの知人が体験したような、
「人生の流れに影響を及ぼすような種類の偶然」っていうのには、
私はまだ出会った事がないですね。
でもそういう事って、きっと実際に起こるんだろうな、と思います。
私は信じますよ、この種類の話。
私もこれから先、そういう深い意味を持つ偶然に、出会うような事があるのかな。
楽しみなような、怖いような。
このお話に登場した「ゲイのピアノ調律師」の姿が、
春樹さんの長編小説『海辺のカフカ』に登場する
“大島さん”とどこかダブったんですけど、それって私だけ??
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●「ハナレイ・ベイ」
【あらすじ】
サチのもとに、ホノルルの日本領事館から、
「サチの息子(19歳)が、ハナレイ湾で大きな鮫に食われて死んだ」
という知らせが入る。
その知らせを聞いたサチは、すぐにハナレイへ向かった。
それ以来サチは、毎年この息子の命日の時期になると
ハナレイの街を訪れるようになった。
ある時、サチはハナレイの街で
日本人の学生サーファー二人組に出会って。。
【感想】
ちょっと最近、人間の命というものについて深く考えさせられたので、
この話は一行一行、胸にしみました。
警官がサチに語ったセリフ、ぐっと来ました。
こういう事が起こった場合、私達はそれを受け入れるしかないのです。
それはとても、難しい事だけれど。
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●「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
【あらすじ】
40代半ばの男性“私”は、探偵業のようなもの(?)を営んでいる。
(しかし報酬は受け取らない。)
そんな“私”のもとに、ある日ひとりの女性が
「夫を探して欲しい」と依頼をしにやって来た。
彼女の夫は、ある雨の日曜日の朝に、
同じマンションの二つ下の階に住む母の様子を見に行った後、
そのマンションの24階と26階を結ぶ階段の途中で、
忽然と姿を消してしまったのだ。
「今から階段を上ってうちに帰る。
すぐ食べられるように朝食のパンケーキの用意をしておいてくれ。
お腹が空いたよ。」
という電話を、妻に残して。
その女性の依頼を受けた“私”は調査に乗り出し、
彼女の夫が消えた「階段」へ向かう。。
【感想】
「健康の為に喫煙を続ける男性」いいですね(笑)
いちばん好きだったのは、小学生の女の子と、“私”の会話のシーン。
このシーンでのふたりの会話は、あまりに自分の心境とシンクロし過ぎて、
読んでて背筋がぞくぞくうっ、となりました。
そう、誰も「ドアのようなもの」を探し続けて、生きているんですよね。
「一目見れば、その場でぱっとわかるはずなんだ。
ああ、そうだ、これが捜していたものだって。」
一目見れば、その場でぱっとわかる。わかる・・・。
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●「日々移動する腎臓のかたちをした石」
【あらすじ】
淳平は16歳の時に、父親にこんな事を言われた。
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。
それより多くもないし、少なくもない。」
父親のこの「三人の女」説は、根拠の十分な説明も与えられないまま、
一種の強迫観念となって、淳平の人生につきまとった。
やがて大人となり、小説家となった淳平は、
ある日ひとりの、不思議な魅力を持つ女性に出会う。
淳平は考える。
「この女性は、自分にとって“本当に意味を持つ”女性なのか?」と。。
【感想】
春樹さんの別の短篇集『神の子どもたちはみな踊る』という本に収録されている
「蜂蜜パイ」という短篇の、番外編にあたるお話です。
私はその「蜂蜜パイ」という短篇が大好きなんです。
たぶん今までに読んだ春樹さんの短篇の中では、いちばん好きだと思います。
何度も何度も、繰り返して読みました。
ちょっと落ち込んだ時とかに、ふっと読みたくなるお話なんですよね。
読むと、ふわっと元気が出る。
その「蜂蜜パイ」の主人公である淳平に、
またこの「日々移動する腎臓のかたちをした石」のお話の中で
再び会えて、とても嬉しかったです。
このお話の中で、淳平は「職業」の意味を、ある言葉に例えます。
その言葉が、とっても素敵なんですよね。
読んでて「あぁ、本当にそうだよなぁ〜」と感動しました。
このお話のラスト近く・・・
155ページの最後の行「大事なのは〜」から、
156ページの1行目「〜常に最終でなくてはならないのだ。」の一文は、
もうこれは、春樹さん自身の想いであり、春樹さん自身の声だと思います。
こういう真っ直ぐな春樹さん、好きだなあ。
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●「品川猿」
【あらすじ】
安藤みずきは、大田区にあるホンダの販売店で働く26歳の女性。
彼女の夫は現在30歳。
結婚生活にも、仕事にも特別な不満はない彼女。
しかし彼女には、人に言えない密かな悩みがあった。
それは、「時々ふっと、自分の名前を忘れてしまう」という事。
思い悩んだ彼女はある日、自分が住む品川区の広報紙で、
「区役所で『心の悩み相談室』が開かれている」という記事を目にする。
みづきはその、区役所の主催するカウンセリングに通い始めて。。
【感想】
やられたー!やられましたー!!
こんな展開、ありですか〜?!
みずきの名札を盗った犯人が判明したところで、
もう私、頭真っ白、口あんぐりでした。
比喩じゃなくて、本当に電車の中で読んでて、
口がぽかーんと開いてしまったんですよ。
「ええーっっ」って感じで。
これには本当にやられた。参った。。
最初にこの話を読んだ時は、その意外な展開のすごさが
頭に強烈な印象として残ったんですけど、
今日もう一回読み返してみたら、
「一番大事なのは、そこじゃないんだな」という気がしました。
この意外な展開は、もちろんこの話の中の非常に重要なポイントだと思いますが、
でもいちばん大事なのは、きっともっと他の事。
春樹さんがこの話を通して、私達に伝えたかった
とても強い、真っ直ぐなメッセージがあるんです。
そのメッセージは私にしっかりと伝わったし、
それは確かな力強い、ポジティブな明るい感触で、私を勇気づけてくれました。
ラストまで読むと、みずきに対して
「頑張ってね!私も頑張るから!」と、
そういう言葉を、笑顔で送りたくなります。
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あぁ、全然さくっと行かなかった・・・。
結局長くなりましたね。ごめんなさい。
(もうそんな事は既に予想してました?)
本当に素晴らしい短篇集でした。
私はもし今、人に「村上春樹さんのオススメ本は?」って聞かれたら
迷わずにこの短篇集『東京奇譚集』をおすすめしますね。
っていうか、聞かれなくてもこちら側から積極的に
「この本、ぜひ読んで下さい!」って
オススメしまくりたい感じです。(←迷惑)
何度も言いますけど、ほんとうぅーーに面白かったです。
「春樹さん以上に、自分の心にぴったり来る作家は絶対いないね!」と
改めて強く確信した本でした。
どの話も、読んでてちょっと泣きたくなりました。
春樹さん大好き!!
http://www.shinchosha.co.jp/murakami/kitan/index.html
(「立ち読み」のところをクリックすると、
この短篇集に収録されている「偶然の旅人」の冒頭文が読めます。)